光学やネットワークの設計、現場での測定において必ず目にする「dB」と「dBm」。
どちらも光の強さを表しているのでは?と混同しがちですが、この2つの決定的な違いは、「比率(変化量)」か「実際の量(絶対値)」かという点にあります。
この記事では、直感的に理解できるよう、例を用いて、分かりやすく解説します。
1. ひとことで言うと?
もっともシンプルな違いは以下の通りです。
- dB(デシベル):どれくらい変化したか を表す単位(相対値)
- 例:「光が半分になった」「強さが10倍になった」
- dBm(デシベル・ミリワット):今、どれくらいの光があるか を表す単位(絶対値)
- 基準は 1 mW(ミリワット) です。
日常生活に例えると
- dB は「昨日に比べて身長が 10% 伸びた」という「倍率」のようなもの。
- dBm は「今の身長は 170 cm です」という「具体的な数値」のようなものです。
2. なぜこんな「対数(ログ)」の単位を使うの?
光の世界では、非常に強いレーザー光から、受信機でかろうじて拾える微弱な光まで、数千万倍という「桁違い」の範囲を扱います。
普通の数字(W: ワット)で計算すると、「0.0000001 W」のように桁数が多すぎてミスが起きやすいため、「対数(ログ)」を使って数字をコンパクトにまとめています。
最大のメリットは、「掛け算・割り算」を「足し算・引き算」で計算できるようになることです。
3. 計算式と変換ルール
数学的な定義は以下の通りですが、まずは「3」と「10」のルールを覚えるのが実用的です。
基本の定義
入力パワー \(P_{in}\) と出力パワー \(P_{out}\) の比率。
\(dB = 10 \log_{10} \left( \frac{P_{out}}{P_{in}} \right)\)
1 mW を基準としたパワー \(P\) の絶対量。
\(dBm = 10 \log_{10} \left( \frac{P \text{ [mW]}}{1 \text{ [mW]}} \right)\)
重要!暗記推奨の「3」と「10」のルール
これさえ覚えれば、現場で暗算が可能になります。
| 変化(倍率) | dB の値 |
| 10倍になる | +10 dB |
| 2倍になる | +3 dB |
| 1/2(半分)になる | -3 dB |
| 1/10になる | -10 dB |
4. 実践的な使い方(足し算で解決!)
光学系での計算は、dB と dBm を混ぜて使うことで非常にシンプルになります。
例:送信機から光を出して、ファイバーを通し、アンプで増幅する場合
- 送信機のパワー:10 dBm(10 mW のこと)
- ファイバーの損失:-3 dB(パワーが半分に減る)
- アンプのゲイン:+10 dB(パワーが10倍に増える)
計算式: \(10 \text{ [dBm]} – 3 \text{ [dB]} + 10 \text{ [dB]} = 17 \text{ [dBm]}\)
わざわざ「10mWを半分にして5mW、それを10倍にして50mW…」と計算しなくても、足し算・引き算だけで最終的な強さが 17 dBm だとわかります。
5. よくある間違い・NG例
- NG:「このアンプの出力は 10 dB です」
- dB は比率なので、「10倍に増幅する」という意味にしかなりません。出力なら「10 dBm」と言う必要があります。
- NG:「コネクタの損失が -5 dBm ありました」
- 損失は「変化量」なので、「-5 dB」と言うのが正解です。
まとめ
| 項目 | dB (デシベル) | dBm (デシベル・ミリワット) |
| 種類 | 相対的な比率(変化量) | 絶対的な電力(パワー) |
| 基準 | なし(比較対象との比) | 1 mW |
| 主な用途 | ゲイン(利得)、ロス(損失) | 送信出力、受信感度 |
| 単位の性質 | 無次元(単なる倍率) | 物理量(電力) |
